読むアイスダンス 創作日記

氷上の社交ダンスと呼ばれるアイスダンス。”観る”だけでなく”やる”魅力も伝えたい。ということで、読むだけでアイスダンスの楽しさを体感してもらえるようなweb小説をと奮闘中です。創作メモなど残していきます。小説もアイスダンスも勉強中。

『僕とあいつと氷ときせき』紹介その1

アイスダンス小説『僕とあいつと氷ときせき』紹介~!

 

ある町に素敵なスケートリンクが建ちます。主人公はいつも幼なじみに強引にリンクに誘われて、遊びとしてスケートを楽しんでいた少年です。
中学2年生で少し成長の遅かった彼は、ふとしたきっかけで自己肯定感の揺らぎを感じ始めます。
自分を認めさせたいという思いと逃げ出したいという思いの狭間で、じたばたしているうちにアイスダンスにのめりこんでいく様子を、ある時はシリアスにある時はコミカルに描いた物語となっています。

 

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第一部

それは自覚なく始まった(1)

 

 二学期に入って間もなくのことだった。

 

 その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。物珍しさで浮れているところに帰国子女らしいという情報も入り、誰もが転校生の登場にますます期待を募らせていた。

 そんな中でただ一人、常葉木果歩ときわぎ かほだけは違っていた。

制覇せいは、今日は五時からだから。来てね」

 隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらをのぞきこんだ。

 

 学活の始まりを告げるチャイムが鳴り響く。途端にみんないつもよりきびきびと席に着いた。すぐに担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。

 果歩は転校生のことなんてまるっきり気にも留めていなかった。クラスがどれだけざわついていても果歩は相変わらずだった。

 

 果歩は小さな紙切れに「五時から!」と素早く書くと僕の机の上にそっと差し出した。

「お前は僕を破産させる気か」

 ここのところ果歩の誘いに乗りすぎて散財していた僕は、そう気のない返事をすると、紙きれに手を伸ばし小さな紙飛行機を折った。

「じゃあ見に来るだけでもいいからさー」

 そう言って誘い続ける果歩の鼻先に僕は紙飛行機をふっと投げた。

「見になんか行ってどうすんだよ」

 果歩は軽やかに紙飛行機をかわしてそれをキャッチすると、僕に飛ばし返して片目をつぶってみせた。

 

kakuyomu.jp

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なお、上で登場する幼なじみといちゃいちゃしながらアイスダンスをする内容ではありません。結構真面目にアイスダンスについて記述しています。ルールをざっくりと知りたい方や、滑った感覚を体感してみたい方、スケート経験者の方、青春小説が好きな方などにおすすめ!